冬の匂いを残した夜
夏の空を思い出していた
広がる月の光の周りを
丸い雲たちが滑り過ぎていく
手品の裏が見えたみたいに
東京の街がかすれていく
心のなかで君に
ナイフを刺しても
笑っているね
心のなかで君を
水に埋めても
すぐに抜け出して
舞台の裏に消えたみたいだ
東京の街がかすれていく
冬の匂いが通り過ぎたあと
夏の空をまた思い出した
桜の並木が華やいだあと
夏の空を思い出していた
自転車のペダルを漕いで漕いで
東京に近づくと
耳元で風がいくつもいくつも
小さな声援 心のなかへ
心のなかの恋しい恋しい君が
ステージの真ん中で
拍手に答えている
色葉が君へ降り注いだあと
夏の空をまだ思い返していた
心のなかで君に
拍手を贈るよ
愛しい愛しい君へ
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