小さなキジトラ 落ちてた弁当漁り
今夜も一日しのいでた
母と別れて泣くことすら知らずに
夜空の丸をながめてた
音がした 月の音だった
音がした 月の音だった
何かを包むよう
小さな鳴き声 満ちてく光のように
今夜も一日がんばった
父と別れて怒ることすら知らずに
夜空の丸をながめてた
音がした 月の音だった
音がした 月の音だった
何かを諭すよう
不思議と笑うことをおぼえた
喜ぶことをおぼえた
世にもめずらしいキジトラは
月の光の中で 濃くも優しい草木の中で
ここにいるよと踊り続けた
そしてまた
音がした 月の音だった
音がした 月の音だった
君を認めよう
音がした 月の音だった
音がした 月の音だった
何かを歌うよう
小さなキジトラ 静かに光を昇り
今夜を最後に消えていく
夜空の先の そのまた先で
新たに誕生するため
砕けて散った
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