まだ見ぬ神保町へ
ひとり部屋の中をひと回り
年がまたひと回り
寒さがこまかくこまかく
記憶を刻んで盗んでく
待てよと言う間に空に浮かんでく
あなたから色が剥がれ
足もとから順に粉が散るよに
わたしの頭のなかから去ってゆく
神保町に行けばあるかな
記憶を留める古文書が
あなたを彩る描き方が
あなたと近づく指南書が
そんなことを考えては
ひとり部屋の中をもうひと回り
いつの間にか年がまたひと回り
神保町へはまだ行くことはなく
雪がはらりと降った知らせだけを聞く
人の記憶の帰る場所
神田神保町
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